私たちが普段町を歩いていると、住宅やマンション、ビルなどの建築現場においてよく見かける足場。
職人さんが資材を運搬したり建設作業をしたりする上で、足場の施工は欠かせません。
そんな足場工事において用いられるのが「足場材」ですが、ご存知の方もいるように、足場材には多くの種類があります。
遠目で見るとどれも同じように見える足場材ですが、実はそれぞれ大きな特徴があり、その用途も全く異なります。
そのため、建物ごとに適した足場材も当然異なってきます。
そこでこの記事では、どのような建物にどの足場材が適しているのかを、建築・建設現場においてよく用いられる足場材の特徴に触れながら解説していきます。
1.建物の種類
ひとくちに建物といっても、その種類は数え切れないほど存在し、その全てに焦点を当てていたらキリがありません。
そこでこの記事では、建物の種類を以下に絞って話を進めていきます。
◎戸建て、低層住宅
◎中・高層住宅(一般的なマンション、ビル)
◎超高層ビル、タワーマンション
2.代表的な足場の種類
冒頭でも述べましたが、足場材には多くの種類があり、建物の種類ごとに適切な足場材は異なっています。
そこでこの章では、建築・建設現場においてよく利用される足場材についていくつかご紹介します。
・くさび緊結式足場
くさび緊結式足場とは、一定の間隔に緊結部を備えた鋼管を建地(=支柱)とし、緊結部付きの水平材(=手すり)や斜材(=筋交)等を建地の緊結部にくさびで緊結し、作業床を付属させた足場です。
俗に「くさび足場」と呼ばれるものです。
1979年に国内で初めて開発されたくさび緊結式足場の商品名から、「ビケ足場」とも呼ばれています。
くさび緊結式足場の主な特徴は、以下の通りです。
・ハンマー1本で簡単に組立て・解体ができる
・コンパクトに結束できるので、輸送コストを抑えられる
・組立てが簡単なので、工事全体の作業時間が他の足場より短い
・表面に特殊な加工がほどこされているので、サビに強く耐久性に優れる
・枠組足場
枠組足場とは、鋼管を門型に溶接した「建枠」にジャッキベース・交差筋違・鋼製布板等の基本部材を組み合わせ、積み上げて構成する仮設足場のことです。
枠組足場の主な特徴は、以下の通りです。
・足場材の強度が他の足場材より強い
・ハンマーによる打ち込みが必要ないため、組立ての際に出る騒音が比較的少ない
ちなみに、建枠のことを「ビティ」、枠組足場のことを「ビティ足場」とも言いますが、これは昭和27年にアメリカのビティスキャホード社から最初に枠組足場を輸入したことが由来です。
・単管足場
単管足場とは、鋼管で作られた単管パイプにクランプなどの基本部材を組み立てて構成する足場のことです。
単管足場の主な特徴は、以下の通りです。
・狭い場所でも足場を組み立てることができる
・主に使う資材は単管パイプとクランプのみであるため、組み立てが非常に簡単である
・ホームセンターなどで手軽に購入できる
なお、足場は「組立足場」と「吊り足場」の2つに大別され、上述した3つの足場は全て組立足場に分類されます。
3.建物の種類ごとに適した足場とは?
ここまで、足場工事においてよく利用される足場材について、代表的なものを3つご紹介しました。
読んでいただければわかるように、一見同じように見える足場材にもそれぞれ特徴があり、その用途は全く異なります。
では、これらの足場材は、それぞれどのような種類の建物に対して利用すれば良いのでしょうか。
この章で、具体的に見ていきましょう。
くさび緊結式足場が使われる建物
くさび緊結式足場を利用するのに適した建物は、従来は木造建築などの低層住宅でした。
というのも、住宅建築の工事はビル等の建設工事よりも複雑な形状の外壁が多く、枠組足場などでは工事に適さないからです。
最近では低層住宅だけでなく、中層建築工事用や高層建築物の外壁塗り替え用の足場など、様々な規模の建築物に対応しており、短期間の補修工事に用いられます。
枠組足場が使われる建物
上述したように、枠組足場は低層住宅の工事用の足場には向いていません。
枠組足場の利用が適しているのは、建設現場である一般的なマンションやビルの外壁面です。
他の足場より高い強度を誇るので、施工期間が長期間にわたっても安全に運用することができます。
さらに、組立時の騒音が少ないので、マンション・ビル内の人々や近隣住民が工事中に発せられる音を不快に感じる機会も少なくて済むでしょう。
単管足場が使われる建物
単管足場は、主に低層住宅の外壁塗装用の足場に適しています。
単管足場は、単管パイプとクランプを軸に、柔軟に足場の形状を変化させることができるため、狭い場所でも組み立てを行なうことができます。
そのため、周囲に住宅が密集している地域の低層住宅においては、単管足場の利用が最も適しています。
また、他の足場材に比べて組み立てが非常に簡単で、資材はホームセンターでも気軽に入手できるため、家庭レベルのDIYでの利用にも適しています。
ここまでお話を進めてきて、実は冒頭で名前を挙げておきながら、まだ言及していない建物の種類があります。
それは超高層ビル、タワーマンションです。
両者は高層建築物に分類されるので、一見枠組足場が適切な足場材のように思われます。
しかし、対象の建築物が非常に高層であった場合、枠組足場は使われないことがあり、さらに別の足場が用いられます。
それが、ゴンドラ足場と移動昇降式足場です。
ゴンドラ足場とは、吊元と呼ばれるフックを屋上に設置し、吊元から作業板がつながっているワイヤロープを降ろして、そのワイヤロープを操作することによって移動する足場のことです。
移動昇降式足場とは、作業板が移動するためのレールを建物に取り付ける形で移動を行う足場のことです。
どちらの足場も、超高層ビルやタワーマンションなどの大規模修繕工事用に利用されます。
まとめ
今回は、建物の種類ごとにどのような足場が適しているのかについてご紹介しました。
工事案件を詳細に確認した上で、どの足場が適しているのかを判断する上での参考になれば幸いです。